漢方薬では、「湯(とう)」「散(さん)」「丸(がん)」という3つの剤形(薬の形)がよく用いられます。
「湯」は、煎じ薬のこと
生薬の成分をお湯で煮だして用います。
代表的なものには、
「葛根湯(かっこんとう)」
「桂枝湯(けいしとう)」
「小柴胡湯(しょうさいことう)」などがあり、
漢方薬ではもっとも多く使われる剤形で、いわゆる煎じ薬(せんじぐすり)と言われているものです。
「散」は、生薬を粉末状にしてそのまま飲むもの
「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」
「五苓散(ごれいさん)」などが有名です。
粉末状にした生薬にハチミツなどを加え、丸く固めたのが「丸」
代表的な丸剤には、
「八味丸(はちみがん)」
「六味丸(ろくみがん)」などがあります。
「湯」「散」「丸」の他に「紫雲膏(しうんこう)」など外用薬の軟膏タイプもあります。
古典には様々な漢方薬が異なった剤形で示されています。
ところが、現在漢方薬は利便性や保存性、利益の追求などの理由から、古典の指示と無関係にエキスとして加工され、細粒、顆粒、錠剤、カプセル剤などとして飲まれることが多くなっています。
例えばもとは丸剤や散剤で飲む八味丸や当帰芍薬散は大手企業が「八味丸料」や「当帰芍薬散料」という名で売っており、これは生薬を煎じて顆粒としたものです。
また、煎じ薬であるはずの葛根湯も手軽に飲めるエキス顆粒が一般的となり、用時煎じて服用する薬効との同等性が心配です。
学生時代に八味丸で糖尿病への薬効の実験を行ったところ、八味丸に含まれる生薬の粉末をネズミにそのままを与えると効果があらわれましたが、
生薬を煎じたエキスでは何の作用もみられませんでした。
古典に記されている剤形には効果を得る為の知恵が含まれているという事が言えます。
漢方薬は原料と製剤上の問題まで見る力を養って症状に合ったものを選択しないと効かない事を知っておく必要があるのです。