【 漢方褒貶】皮膚病も漢方薬で対処します

漢方褒貶

60代後半の男性、お尻の出来物で自転車にも乗れないとの主訴の電話相談です。
以前は西洋医学的な処置を受けていたそうですが、抗生物質を出されるだけで再発と腸内細菌への心配もある上に、なかなか改善せずに困った、苦い経験をされたと感じさせます。
毛嚢皮脂腺内に黄色ブドウ球菌などの化膿菌が侵入して発症する癤(せつ)が一ヶ所に群生し浸潤して硬結したものを癰(よう)といいますが、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を引き起こすと治し難いこともあり注意が必要です。
来局されるまで一週間ほど時間の調整ができず、電話による相談の内容だけで緊急的に“十味敗毒湯”の顆粒剤をお送りし様子を見ていただくことにしました。通常は赤く腫れた大きな出来物に用いる漢方薬です。

一週間後の来局時、食事には日頃から気を付けているか、血液検査のデータなどを基に問診や望診をはじめました。一番に気づいたのは間食しがちで甘いものが大好きだということです。定年退職されストレスの少ない生活を楽しまれていてもこれではという内容です。体格は中肉中背でやはり不健康な食事が元気のない細胞を造り、活力のない組織に病原菌が住み着いた結果であるという旨をよく説明しました。

 

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まず日頃の生活習慣の改善がこの病気の発生抑制の基にあります。特に最近は果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖があらゆる加工食品に添加され非アルコール性脂肪肝を誘発します。加齢と共に運動量が減少したことに加えて過剰なエネルギーの補給も重なると生活習慣病の原因にもなります。食事内容の重要性、バランスを考え季節の食材を活用することに納得されました。幸い来局された時には“十味敗毒湯”が奏効しもう自転車等にも乗れるようになったとお帰りになられました。軽い症状でしたら、外用薬“紫雲膏”だけで治まることもあります。若い男性は特に動物性の脂肪の摂取過多、女性は生理不順等他の因子の解決が大切な場合もあります。皮膚病においても西洋医学にはない考え方で再発の予防や治療が行えます。

また、甘味や澱粉の摂取過多は体液を少し酸性にしてしまいます。体内はpH7.34位の少しアルカリ性になることで潤滑に生命反応が進行します。体内の酵素反応などはpHが0.1変化するだけで反応速度は激変してしまいます。それだけでなく、ゲノム解析が進み生命反応に係る遺伝子の発現の調整にも非常に影響を与えている事がわかって来ています。酸性食の摂食が多いと骨軟化症も誘発することがよく知られています。健康寿命をいかに長く保つかという課題の解決策はこの辺にありそうです。さらに言えば化学肥料で栽培された外観だけが立派な食材よりもしっかりとした土壌でそれこそ大地に根を張って育った物がその内出番となると思っています。


薬剤師・医学博士 山原 條二

 

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